3月のテーマコラム「震災から10年」(byきたい)
世の中にはたくさんの仕事があります。震災のとき、私は週刊誌のグラビアページの編集作業中で、揺れ始めてからは、マンションの9階にあるオフィスで資料用本棚を支えていました。その後、テレビのなかでは連日、地震そのものの被害復旧や人命救助、津波や原発事故への対応などで、多くのプロフェッショナルが大変な苦労をされていました。一方の私は、翌日以降も、震災関連のニュースを横目に、雑誌や単行本の編集作業を淡々と続けていました。淡々と作業しないと、心の隙間に無力感が忍びこんでくるからです。幾度となく、「この仕事、いま必要?」と煩悶しました。第三次産業に従事する多くの方は、似たような葛藤を感じたのではないでしょうか。それでも、「日常が戻ってきたときに必ず必要になる」と信じて、作業を続けました。あれから10年。書店を訪れたときなど、少なくともあのときの自分は間違ってなかったんだと思えます。世の中にはたくさんの仕事があり、いろいろな形で社会とかかわっています。亡くなった方たちの思いを背負いつつ、生きていくために必要なのが「仕事」。多くの亡くなった方たちのご冥福を祈るとともに、今日も仕事ができることに感謝して、10年の節目をかみしめたいと思います。
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